『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。

困ったように笑う顔が何とも言えず可愛くて、思わず彼女のことを抱きしめてしまった。



「えっ…⁉︎ あ、あの…⁉︎ 」


ぎゅっ…と、いつもされる様に抱いただけだったが、抱きつかれた彼女はひどく混乱していた。


「あ…あの、剛さん…!」


強めの声は、軽く拒否しているようにも受け取れた。
腕の力を緩めて見ると、彼女の頬は濃いピンク色に染まっていた。


「お、おばあちゃんが見てますから…!」


チラリと向ける視線の先で、祖母が唖然…とした表情をしている。

昨日よりはまともそうだ……と、少なくとも俺にはそう思えた。


「…ご飯にしますか?」


彼女に聞かれ、「うん…」と頷いた。

キッチンへ向かう彼女に視線を流した後、祖母の近くに寄って行った。



「ばあちゃん、おはようございます…」


久しぶりに挨拶して緊張した。
祖母はご飯を摘もうとした手を止め、俺の方を見返した。



「おはよう。仁ちゃん」

「えっ…⁉︎ 」


長男の名前を呼ばれ、ぽかん…としてしまった。
祖母は間違ってることも気に留めず、黙々と食事を再開する。

呆れる俺の背後から来た彼女が、食事をテーブルに置きながら言った。


「昨日からあたしもずっと『ユイカ』さんと間違われてるんです。おばあちゃんにとって『ユイカ』さんは余程大事な方なんですね…」


誰ですか?…と聞いてこない彼女に、それは姉のことだと説明した。