「それで…?」
電話の向こうからメグの不機嫌そうな声がしていた。
「だからー、お見合い相手の『ゆる彼』とハグしたの!最初はあたしの妄想が突っ走っただけだったけど、二度目は相手からも「しますか?」って聞いてくれたし、実際抱き合ってたのは、ほんの数秒間だけだったし…」
料理を運んできた仲居さんの声に、あたし達は大慌てで離れた。だから実際に抱き合ってたのは15秒程度くらいだ。
「いや、だから愛理、時間が問題なんじゃなくて、どうしていつもそんな事になるの⁉︎って言いたいの。私言ったよね⁉︎ 今回は大人しくしときなさい…って!」
イラッとした感じでメグが怒る。
育児疲れで微睡んでるところに電話したあたしもいけなかったけど、何よりも今回のお見合いは、メグ自身が楽しみにしていたみたいで……
「折角イイ感じの人みたいで安心してたのに、またしても変な人だったのね…」
落胆に近い声を出す。
真面目な彼女からしてみれば、初対面で抱き合うあたしも久城さんも、とんでもない人の枠に入るのかもしれないけど…。
「久城さんは変な人じゃなかったよ。普通に真面目そうな方だったし、聞いた限りお仕事もきちんとしてるし、何より懐があったかい!
胸板の厚さも丁度よかったけど、気持ちの度量が大きいって言うか、とにかく何もかもがあたしの理想通りの人だった!」
ハグし合ったのは最初だけ。その後は向こうからもハグしてこなくて、勿論あたしからもすることなくお見合いは終了。

