『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。

…抱きついてきた彼女の指は、小刻みに震えていた。

背中にまで回しきれない手が、肩甲骨の辺りで止まる。

驚いて見下ろした髪の隙間から、何かが流れ出てるーー。




(血っ……⁉︎ )



ビクッとする彼女の肩を掴んで離した。

左側の額が裂けて、薄皮がめくれてる。
滲んだ血が眉尻を伝い、こめかみにまで達している。


彼女の左手が額の傷を覆い隠すように握られた。引きつったような笑みを浮かべ、声を震わせながら呟いた。


「だ…大丈夫です。ちょっと切っただけですから……」


ドジなんです…とごまかそうとする。
だけど、ごまかしきれる様子もなくて、ぐずっ…と鼻を鳴らした。


「一体、何が…」


話しかけて気づいた。

車内にいる彼女は薄着だった。上着も着ずに寒そうな格好をしている。
よほど急いでたのか、薄いTシャツと襟付きのスポーツウエアを重ね着してるだけ。
ズボンはお見合い写真の時と同じくジャージ姿で、足元は上靴の様なサンダルを履いていた。


「愛理さん……もしかして仕事場からここへきた?」


こっちの質問に大きく体を揺らした。

上げる眼差しが開かれたままブルブルと震えだす。


……何かあった…というのは直感で分かった。

でも、もう勘で勝負したくないーーー。