『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。

老先生には持病があって、それはひょんな事から繰り返す。
その日も午前の診療を終えた直後から調子が悪くなり、孫である若い方の武内医師に予約患者を診るよう指示が下った。


「またお前に会えるのか思ったら嬉しかったよ。…なのにお前どころか、久城のばあさんまでが来ない。
すっかりアテが外れてガッカリしてたけど、まさか同じ職場で会えるなんてな……」


皮肉る武内から距離を置いたまま愕然としていた。

薬は途中で止めてしまうと効果が無い。


…おばあちゃんの身に何かあったのだろうか。
それとも、彼に何か……?



いろいろと考えたくてもまとまらない。
あたしは目の前にいる男から逃げたくて、その機会を伺ってたから。




「愛理…」


武内が馴れ馴れしく名前を呼んだ。
あの夜に囁かれた時と同じように聞こえて、ビクッと身を震わせた。


「な、何よ……!」


挑戦的な眼差しを向けるあたしを不敵に笑う。
相変わらず嫌な感じ。
大嫌いな奴だ。これからもーーーー



「元の鞘に収まらないか?俺とやり直そうぜ」


武内の言葉に耳を疑った。
引きつりながら睨んでるあたしを見て、さらにこう続けた。


「お前のことが忘れられないんだ。…久城の野郎とは夫婦でも何でもないんだろう?その場しのぎな演技なんてしやがって、わざとらしい」


「違っ…!」


反論しかけて止める。
よく考えてみたら、武内の言う通りだ。