リビングを一歩出ると、力無くしゃがみ込んだ。

一気に気持ちが緩んで、ボロボロと涙が溢れてくる。


自分で望んだ筈なのに、どうして泣く必要があるだろう。

武内の時と同じ。

今の結果を受け入れればいいだけだ……。



(だけど…)


手にした婚姻届を書いた時、間違いなく彼と幸せになろうと思った。

理想の『ゆる彼』と始まった結婚生活は、きっと愛に満ち溢れる筈だと信じた。

亡くなったご両親の分も彼を大事にして生きていきたい……と、そう願った。



だから、おばあちゃんが少しくらい大変でも平気だと思った。


自分は施設のお年寄りから逃げ出してきた人間。

無責任なまま利用者を放置した情けないケアマネ。


そのあたしにやり直すチャンスをくれた。

今度こそ投げ出さない。きちんとお世話し続ける。
あたしの知ってる知識と経験を活かして、おばあちゃんの生活を守ろうと決めたけれど……。



(ごめんなさい……。あたしはやっぱり意気地なしです……!)



間違えてたの、今回も。

今度こそは違うと思ってたのに。


理想通りなんてそう簡単に転がってる筈がない。

現実なんて、想像を絶する事ばかりなんだからーーーー。






………寝室のクローゼットの隅から実家の両親に電話した。


「家に戻るから荷物を取りに来て…」


頼む理由(ワケ)を聞かれた。


「どうしたの⁉︎ 理由(ワケ)を言ってごらん⁉︎ 」