「まさか……そんな前のものを見せたの⁉︎ 」


ぎょっとして立ち上がった。


10年近くも前のもの。そんなの詐欺に近いじゃんーー!


「当然でしょ!」


母はお見合い写真を手にしたまま、大きく胸を張った。


「あの時の愛理、サイコーに可愛かったもんっ!…私の自慢の娘として、何処に出しても恥ずかしくない写真よ!」

「写真よ!…って、あのね〜……」


ニコニコして、ぐうの音も出せない顔してる。呆れてものが言えない母の姿に、ガックリ…とうな垂れた。


「実はね、もうお見合いの日取りも決まってるの。再来週の日曜日!相手様が忙しい方で、その日以外空いてないんだって!」


「さ、再来週の日曜⁉︎ …もう10日もないじゃん!!」


ずっとヘアサロンにも行ってないよ。

爪だって忙しかったから、手入れも何もしてないし。

メイクはいつもおざなりだったから、流行りもさっぱり分からない。

服はこの最近買ったこともなければ、ヒールのある靴なんて一足も持ってないよ⁉︎


そもそも お見合いって、何着て行くもの⁉︎


ワンピ ⁉︎ …それとも着物……⁉︎




「…良かった〜」


狼狽える私を見て、母が妙に安心する。

「何がいいのよ?」と聞き返すと、満面の笑みを見せられた。


「愛理がお見合いに乗り気だから!もしかしたら断ってくるんじゃないかと思ってたけど、その感じならオッケーなのね!」