『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。

「…大丈夫です…」


可愛げもなく彼女がそう答えた。
少しくらい不安そうな顔を見せてくれてもいいのに、そんな顔は一切してくれないんだな…と、つまらない思いが走った。



「そうか……じゃあ後はよろしく。…ばあちゃん、仕事に行ってくるから」


祖母は飲みかけてたコーンスープのカップから口を離してこっちを向いた。
欠けてる前歯の隙間から、スープが少しだけ垂れている。

昔の姿とはかけ離れてしまった現実を、俺は嫌気がさしながら見つめ返した。
そんな思いを何も知らず、祖母はニコリと微笑んだ。

「行ってらっしゃい、仁ちゃん。お勉強頑張ってらっしゃいね」


(薬を飲みだしても、俺は兄貴のままなのか…)


ガックリしながらリビングを出た。

置き去りにしていく二人が過ごす一週間以上もの長い時間を、俺はすごく簡単に考えてた。


婚姻届を提出しなければならない…という思いは、この時少し失せていた。

…存在自体を忘れかけていたと言う方が、正しいかもしれない。

突然にやって来たお荷物のせいで、何かが狂い始めているようだったーーーー。