『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。

久城さんの質問にギクッとしてしまった。

せっかく忘れようとしてたのに、またしてもここで古傷を思い出す羽目になる。

隠すのも変な気がする。
第一あの時「顔見知り」だと、武内が喋ってしまった。



「……以前勤めてた職場の同僚なんです」


それ以上は聞かないで欲しい…と願いながら話した。
朝食後のコーヒーを飲みながら、久城さんはちらっとあたしの顔を見た。


「ふぅん…それで?」


他にも何かあるんだろう…と言いた気な態度を示す。
言うに言えないことばかりなのに、それ以上聞かれても困る。



「それで…って……それだけですよ、他は何もありません…」


送った視線にわずかに目を合わせただけで、彼女はフイ…と他所を向いた。


ーー咄嗟に嘘だと分かった。
話せない何かが二人の中にあって、それに触れられたくないんだ…と直感した。



「そうか…何もないんだ…」


冷たそうな声を出して、久城さんはカップを皿に戻した。

ソファから立ち上がり、上から目線を向けてこう言った。


「今夜からホテルに泊まる。出張明けまでは戻れないけど、大丈夫だよね?」


……平気だと言ったあたしの言葉を試すような聞き方だった。
半ば怒ったような感じがして、一体何が気に入らなかったんだろう…と思った。