「そうか…。それで君は?…食欲ないとか…大丈夫?」


病院では始終無口で医師に発した言葉以外、無駄口は叩かなかった。
少し強張った顔つきではあったが、特別変化はないようにも思えた。

時々、医師の顔を睨んでた。何かがあってそういう態度を見せてるんだな…というのは分かる。
ただ、その何かが分からず、ずっと心にモヤモヤが引っ掛かってた。


「ちょっと胃が痛かっただけで、今はもうどうもないです。それより久城さん晩ご飯は?頂かれましたか?」


何か作りましょうか?と彼女は聞いた。
祖母の作った朝ご飯のようにはいかないけど…と笑う彼女は、いつものように明るかった。

手料理なんて、この数年味わったことはない。
食べてはみたいが、既に時間が遅すぎる…。


「商談の席で食べたからいいよ。それよりあの医師が言ってた注意事項って何だった?」


質問にピクリ…と顔を引きつらせた。
ごまかすようにコホン…と咳をして、「あのですね…」と囁いた。


「先生は、おばちゃんを言葉で脅したり怖がらせたりしない様にと仰いました。優しく受容する態度で接して欲しい…と」


難しいですよね…と微笑んだ。
何かをはぐらかしてるように見える彼女に、医師との関係について尋ねてみたい。

ドクン…と胸の奥が疼くのを感じる。
その疼きを抱えたまま、口を開いたーーー。




「あ…おばあちゃん…」