「杏華頼むから帰って来れ!俺はもうお前と遊ばない」

「恭之助さん今日だけ?今日だけで良いの思い出にするから…済んだら大人しく帰る、ね?お願い!」

「分かったよ、今日だけだからな…」

「うん!ありがとう」

「おい!腕を組むな」

「いいじゃない?誰も見てないわよ!」

なんで俺が付き合わなきゃいけないんだよ…
まだ準備終わってないんだぞ!ったく
杏華にここのレストランで食事を奢れと言われその後バーにも付き合わせられ結局その後は何も出来ずに寝てしまった。
翌朝、生け花展の準備に部屋を出る前に携帯を見ると碧海からの履歴に気づいた。

「もう仕事に入ってるよな…?昼休みにかけるか?」

午前中は会場作りに追われ自分の作品は午後から作る予定だった。
そろそろ碧海、昼休みに入ってるな電話してみるか?

「ん?…出ないな、仕事でトラブルでもあったか?昼飯食ってからかけかけ直すか?」

何度電話をしても碧海は出ない…
俺はこの生け花展で碧海をイメージした花を生けたかった。
あの時の碧海を…
絢爛、清楚、知的、あの時の碧海を生けたかった。
頭の中ではとっくにイメージは出来ているのに思うように生けれない。
昼休みの間には碧海から電話がかかってくる事は無かった。
心が乱れている今の俺では生けれない…
心が乱れていては花を生ける事など出来ない。
碧海…
ほとんど手を付けれないまま夕方になってしまった。
碧海の仕事の終わる頃かけたが出ない。
何度かけても…
碧海、なぜ出ない?
20時を過ぎても出ない…
何かあったのか?
心配になり木ノ下に電話してみる。

「もしもし一郎太か?」

『先輩どうしたんですか?明日の準備出来ました?俺も玲美と見に行きますからね!』

「あぁ、ありがとう。それより碧海と連絡つかないんだけど何か知らないか?」

『ん…先輩、碧海さんと何かありました?』

「俺は何も無いが…どうした?」

『今日、ずっと変だったんです。元気がないと言うか、何か考えているようで…俺聞いたんですけど何も無いって言われて…帰りも今日は残業するような事は何も無かった筈なんですけど、残業するからって残っていたし…』

「そうか…」

『先輩、俺会社戻って見て来ましょうか?先輩明日の準備で動けないですよね?』

「いや大丈夫だ、心配かけて悪かったな?会社の方に電話してみるよ」

会社の方に電話したがやっぱり出ない。
携帯を鳴らし続けたがやっぱり出ない。碧海どうして出ない何があった?
クッソー…
もうすぐ23時だぞ!…
碧海、どこ居るんだ。
かけ続けた電話の呼び出し音が消えた。

「っもしもし碧海!!やっと繋がった…どうしたんだ?何故電話に出なかった?心配するだろ?今どこだ?どこに居る?碧海、碧海❢「」

だが碧海は何も言わない。

すると『よっぽど心配してたんだな?』と男の声がした。

「碧海、誰と居るんだ?碧海何とか言え!」

なぜ喋らない?そこに居る男は誰だ?

『もしもし葉瀬さん、こんばんわ!佐久間です。今、ホテルですよね?ちなみに葉瀬さん1人ですか?1人ならそっちに差咲良送っていきますけど?もし他の女連れ込んでるならこのまま差咲良俺の家に連れていきますけど?』

こいつ何言ってるんだ?俺は苛立ち大きな声で怒鳴った。

「情報屋、何言ってるんだ!!俺が碧海以外の女連れ込む訳無いだろふざけた事言ってないでさっさと碧海を返せ!」

『今、ホテルの前にいますよ?』と佐久間は笑って言う。

直ぐに生け花展会場を出て階段を降りホテルの玄関前まで急いで行く。
俺は碧海を見つけると抱きしめていた。

「碧海」良かった無事でよかった。

「じゃ俺帰ります、あっその前に言っときますけど、差咲良ラーメンにニンニクたっぷり入れてましたからキスする時覚悟して下さいよ?」と佐久間は大笑いしている。

「情報屋!すまなかったな?有難う」と佐久間を見送る。