砂糖菓子より甘い恋1

暫くするとバタバタと騒々しい足音が響いてきた。

「申し訳ありません。姫様が見当たりません」

女房が頭を下げる。
ふう、と、タヌキが重いため息をついた。

「このとおりなのだ、龍星殿。手に負えないじゃじゃ馬娘なんですよ。来年は13歳になるというのに、成人させることもままならない。何とか良い手はないだろうか」

この、人生思うがままのようなタヌキにもままならぬことがあるとは。
龍星はうっかり姫の肩を持ちたくなった。


「そうですね。笛など習わせてはどうです?」

「笛?」

「そう。遠原殿など適役かと」

「雅之殿か。確かに、今まで女性につけて筆や琴など習わせようとしても一切上手くいかなんだ。雅之殿ならば、あのじゃじゃ馬娘を手なずけてくれるかもしれんな」

タヌキはその案に乗ったようだった。
龍星は、早々に話を切り上げ、左大臣家を後にした。