砂糖菓子より甘い恋1

するりと毬は樹から降りて、とん、と廊下に着いた。

「毬と申します。
あの、先生、まだ怒ってますか?」

「姫の部屋で待っているから直接聞くと良いですよ」

毬は無意識に手を頬に当てていた。


「もう打たないかしら」

初対面でない気安さからか、子どもじみた表情で龍星を見る。

「さあ?私には判りかねます」

あくまでも初対面を装う龍星に業を煮やして歩きだす毬。

その時。
ふうわりと、龍星の細く長い指が毬の頭に伸びた。


「桜の花びら、乗ってます」
「ありがとうございます」

よっぽど恥ずかしかったのか、毬は花びらを受け取ると足早に部屋へと歩いていった。


龍星は一人、庭を見つめる。


……あの桜……