砂糖菓子より甘い恋1

龍星がくれた半紙を身に付けていると、とても心が落ち着いた。

毬は珍しく、父親の選んだ、「姫君の格好にふさわしい」着物を着て、笛の講師がやってくるのを待っていた。

左大臣は、御所から雅之を連れてきた。

これまた、昨日の優男風の龍星とは異なり、いかにも男らしい武人で、左大臣家の女房達をときめかした。

「急に御呼び立てしてごめんなさい」
着物に似合うしおらしい声で毬が言う。

「いえ。左大臣様の頼みとあれば」
言うと、雅之は懐から愛用の笛を取り出し、奏でてみせた。

うっとりするような優しい音色。


毬も今日父親が買ってくれたばかりの笛を唇にあてる。

ふう、ふうと息だけが漏れ、ちっとも音にならない。
苛々して、張り付けたはずの『姫』の仮面がはげていく。

「もー!毬には無理っ」

癇癪を起こして、笛を庭に投げ付けた。

刹那、

パシリ、と、御所でも温厚過ぎると有名な雅之が毬の頬を叩いた。

じゃじゃ馬といえども、甘やかされて育った毬は、もちろん頬を打たれたことなど一度もない。

毬が呆気に取られている間に、雅之は裸足のまま庭に笛を取りにおりた。