砂糖菓子より甘い恋1

「姫、ちょっと待って下さいね」
抱き寄せていた手を離すと、さらさらと慣れた手つきでなにごとかしたため、紅い唇に指をあて、耳慣れない言葉を呟いてから、気を紙に送った。


一瞬。
闇に青白い光が走る。

「これを枕元に置いて眠ると良い。貴方を護って差し上げます」

仔犬、もとい姫はそれを受け取り、目を丸くした。

「でも……」

何かを躊躇う眼差し。

「大丈夫。今夜はゆっくりおやすみなさい」

「でも。

毬のせいで呪術師様が眠れなくなったり、しない?」

真っ直ぐな毬の瞳が、龍星の胸に突き刺さる。


お札をいろんな人にあげてきた龍星だったが、喜ばれこそすれ、身の心配をされたことなど一度もなかった。皆、呪術師は不死身くらいに思っているのだ。

だから、こうも真っ直ぐに心配されると面食らう。

龍星は毬の瞳を覗きこんで、優しく言った。

「私もきちんと眠りますから、姫もゆっくり眠りなさい」


それは暗示だったのか。
毬姫は龍星の胸に崩れ落ちるかのように、一瞬にして眠りに落ちていった。