「宝条院ってあの宝条院かよ!?」

「あのってどの!?」

「あのっつったらあのだよ!!」



だからその『あの』が分かんないっつってんでしょーが!!



「お祖父ちゃんのお仕事とか聞いてる?」

「経営者としか聞いてないけど……。」

「じーちゃんの名前は!?」

「重忠だけど……何で?」



樹希は口を開けたまま固まってしまった。


華も目を見開いたまま動かない。


この反応何!?



「ちょっと何なの!? 訳わかんないんだけど……。」



ハッとなった樹希は身を乗り出した。



「お前のじーちゃんスゲー大物だぞ!! 宝条院グループっつったらな、毎年長者番付で上位に挙がるくらいスゲーんだからな!!」



長者番付ってあのお金持ちが載るやつ!?



「えぇぇぇ〜〜〜〜っ!?」



私の声が中庭に響き渡った。


樹希と華からは呆れた顔をされた。


どうしよう……。


不安なんて一つもないと思ってたけど一気に不安になってきた。


私は未知の世界に足を突っ込んでしまったんだと、気が遠くなりそうだった。