お腹すいたので海堂の反応を待たずに私も食べた。


今のお家ではシェフが料理を作ってくれる。


凄く美味しいし、私が好きな食材も聞いてくれて、好きなものも作ってくれる。


だけど、家族との思い出の味はやっぱり別格だ。


……あれ?


静か……。


手を止めて顔を上げた。


さっきまで文句たらたらだった海堂は、無言でパクパク食べてくれている。


口に合ったのかな?


いつも上から俺様な海堂が不思議と少し可愛く見えた。



「……いつ覚えたんだ?」

「何を?」

「料理」

「両親共働きだったから、小さい頃から自然とやってた。 でも時間があるとお母さんとおばあちゃんが料理を教えてくれた」



静かに見つめられて変に緊張した。


口を開けばむかつく奴だけど、顔が整ってるし黙っていればかっこいい。


玲の妖艶な美しさとは違って男らしい感じ。


好きではないけどそんな人にジッと見つめられたら多少なりともドキドキしてしまう。



「母親の味……か……」

「え……?」

「何でもない」



そう言って海堂はまた食べる手を動かした。


食事中私たちの間に会話はなかったけど、ぎこちない雰囲気でも険悪な雰囲気でもなく、穏やかな時間が流れていた。