「お兄さんと似てる?」

「見た目はね。 中身は似てないって言われる」

「そうなの?」

「兄はよく喋るしかなり社交的。 母に似てる」

「じゃあ玲はお父さん似だ?」

「母曰くね」



一度だけ何かの挨拶の時に鳳理事長を見た事がある。


気難しそうな人に見えたけど、玲みたいな人なら実はそうじゃないのかもしれない。



「お兄さんと仲良い?」

「普通?」

「あははっ、普通ってなに」

「男兄弟なんてそんなものでしょ。 でも兄が居てくれて良かったとは思ってるよ」

「って事は玲はお兄さんの事が好きなんだね」

「好き、とは違うかな」



首を捻って玲の顔を見上げると、玲は窓の外を眺めていた。


どの角度から見ても綺麗な顔は変わらない。



「飽き性な俺が唯一続けてるモデルの仕事を、ずっと続けられてるのは兄のおかげでもあるから」

「お兄さんが何で関係あるの?」

「長男で家を継ぐのは兄だからね。 だから俺はある程度好き勝手させてもらえてる。 やりたくもない仕事に縛られて、余計つまらない人生を歩むなんて御免だ」

「…………」



玲の言葉に何も言えなかった。


分かっていた事だけど、この人は何かに縛られるのをこんなにも嫌ってるのかと改めて感じた。