「早川ぁ?なぁにやってんだそんなとこで。もう下校時刻過ぎてんだぞ?」
数学の先生だ…
期待していた人じゃなかった。
全く予想もしていなかった人。
ガラガラな声。
薄い頭。
背が、小さい。
戸田くんじゃ、ない…
「…帰ります。すみません」
「気をつけて帰るんだぞ」
帰り道は孤独と寒さで何も考えていなかった。
ショックさえ、感じられなくて。
ただただずっと細い小道を歩いていた。
君は来ない。
そう思うと涙が出た。
涙は溢れるのに、何も感じられない私。
溢れ出す涙は意味もなく、私の頬を伝う。
君は私が傷ついて泣いてることを知らない。
私は君のなに?
あれは全部嘘だったの?
なかなか寝付けなかったあの日も全部、嘘だったっていうのかな。
それならもう、知らなくていい…
近くて遠い君。
いや、近くなんてない。
もとから私たちの距離は何万キロとあったんだ。