君との距離が近くなって、すれ違うその瞬間。 君は小さな小さな声で「おはよう、戸田くん」とつぶやくように言った。 目を丸くした。 驚きで一瞬足が止まりそうになった。 でも余裕なふりをしてカッコつけたかった俺は、「おはよう、スミレちゃん」と言う。 届いた、俺の声。 いつも届かない俺の声なのに、今日は届いた。 君がもし、俺と付き合ってくれるなら、毎日君におはようを言いに行く。 君が泣いてる時にそっと抱きしめてあげられる。 君が嬉しい時に一緒に喜んであげられる。 なのに君は……。