息を大きく吸って大きく吐く。
うるさい心臓を黙らせようと、胸に手を当てた。
深呼吸もいっぱいするけれど、それは黙ってくれなくて。
近づいてくる君をチラッとみて、下を見る。
…チャンスは今だけ。
大丈夫、言える。大丈夫。
そして、すれ違おうとした瞬間に、
「お…」
おはよう。それを言うつもりだった。
でも弱虫の私にはそれができない。
その影は私の横を通り過ぎて、スタスタと歩いて行った。
「…意気地なし」
自分に向けて、そう呟いた。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…