岩堀のことがずっと頭から離れないまま、午前の授業を終えた。
遅刻して朝ごはんを食べ損ねた健太が、『購買のパンじゃ足りない!今日はガッツリ食う!』と言うので、
いつもは購買のパンで済ませてる俺も、今日は食堂に行くことにした。
「先に席とってくるわ」
「おう」
席を探しに行った健太の代わりに、俺は財布を片手に食券を買う列に並ぶ。
すると横から、女の人が俺の目の前に割り込んできた。
「…あの、並んでるんですけど」
「あら、ごめんあそばせ♪」
入ってきたのは、ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべる、亜里菜先輩。
うわ…今もっとも会いたくない人だ。
「あ、どうぞどうぞ。
俺後ろ行きます」
なにか嫌な予感がして、視線を逸らしながら列を外れようとした。が。
「待てぃ」
ガシッと腕を掴まれて、逃げられず…。
亜里菜先輩、くっそ力強い…!!
「翔真くん♪
お姉さんと少しお話ししませんこと?♡」
「……ぐっ…」
楽しそうに笑ってるけど、腕の力は抜けないまま。
……逃げられるわけがなかった。



