どうやら悪ふざけで、日笠くんが私の足を掴んで沈めたみたい。
「……びっくりした」
「ははっ!大成功!」
「もう…っ!」
ひっくり返ってしまった浮輪を戻し、掴まると、
日笠くんも同じように浮輪に掴まった。
「由佳菜ちゃん」
「……?」
やけに真剣なトーンで私を呼ぶ日笠くん。
首をかしげると、日笠くんはぐいっと私の腰を引き寄せた。
「えっ…」
「由佳菜ちゃん」
日笠くんの顔が、すごく近くにある。
ちょっとでも動いたら、唇がぶつかってしまいそうな距離…。
ずっとぶつかったままの視線。
日笠くんが、何考えてるかわかんなくて、
怖くて、距離を取ろうとしたら。
ザバッ!と、すぐ近くで水中から人があがってきた。
「うわぁ!!」
びっくりした日笠くんが仰け反って、私から離れた。
「……なにしてんの?」