私と直兄のやりとりを、うしろで良くんがじっと見ているような気がした。



なんとなく、この場を離れたかった。



「じゃあ、良くん、ほんとにありがとうね。帰ります。」



「うん、気を付けてね。」



私たちは、保健室を出て、ちょうどやってきた葉子から荷物を受け取った。



「ありがとう葉子ちゃん。」



「このはのことよろしくお願いします!」



「うん、…このは?」



私は気がついたら立ち尽くしていた。



『すごく、仲が良さそうだなーって』



さっきの良くんのことばがよみがえる。



仲がいいと言われただけだ。



私がこんなにヒヤヒヤしているのがおかしいんだ。



たぶん、小さいころの私たちを見られていたことが引っ掛かっただけだ。



大丈夫、ばれているわけないんだから。



私はそう、自分に言い聞かせた。



「このは?」



直兄が心配そうにこっちに来た。



「あ、ごめん…」



「具合悪いのか?」



「ううん、なんでもない!帰る」



直兄の優しい笑顔を見ていたら、もうどうでもよくなった。