『はぁ…なんとなく、そんな予感はしてたよ。』
「はい?」
長く、重い溜め息をついた先生は、相当参ってるらしく、捨てられた子犬みたいだ。
『去年の今日も、繭ちゃんにアプローチしてたけど、全然響いてなかったし。今日だって、さっきまで繭ちゃんから何の連絡もなかったから、用意してないのかなぁなんて思ってたけどさ。』
「……。」
『繭ちゃんからビニール袋渡されて、勝手に期待しちゃった俺も悪いとは思うけど…。』
何なんだ、この岩崎先生の小言タイム。
相変わらず右腕は掴まれたままで、岩崎先生の私への期待度がいかに高かったのかがうかがえる。
まぁ、確かに…その期待を裏切っちゃったのは、まぁ…申し訳なく思わない…こともないけれど。
『俺は繭ちゃんの愛のこもったチョコが欲しかった。』
「…栄養ドリンクじゃダメなんですか。」
『ダメ。』
「それに私の愛が入ってても?」
『それは……ダメじゃないけど。』
うっ、と息を詰まらせた岩崎先生を見た私は、更に畳みかけるようにつづけた。
「私のチョコが欲しいなら、あの後部座席にあるチョコの山、どうにかしてください。」
『……!』
思わず出てしまった自身の本音に驚いたのは、岩崎先生以上に私の方だった。

