THE 番外編。




そんな私を見て、私が思っていることを察したらしい小島さんは、言いにくそうに口を開く。


『あ、もしかして…まだ私が岩崎先生のことを好きだと、思ってる?』

「……。」


小島さんの問いかけに、肯定も否定もできないくせに、そうじゃなかったらいいと思っている私は、なんて浅はかな人間なのだろうか。


『…実はね、去年のバレンタインに岩崎先生に渡したんだ、チョコ。その時に告白もしたんだけど…。』


その場面を見てしまっている私は、なんて相槌を打っていいのかさえも分からない。

でも、私は遠方からしかその場面を見ていなかったため、小島さんが岩崎先生に告白をしていたことは知らなかった。

もちろん、岩崎先生が小島さんの告白に、どう返答をしたのかも知らない。


『まぁ、断られたよね。“チョコは受け取るけど、君の気持ちは受け取れない”なんて、どっかで聞いたようなセリフ言われちゃってさぁ…。』


いつもの人懐っこい微笑で、軽く岩崎先生をディスっている小島さんに、小さく笑いが出てしまった。


『しばらくは、岩崎先生にフラれたっていう事実を受け入れられなかったんだけど…、最近は、思った以上に岩崎先生を見てもトキめかなくなって。…やっと、踏ん切りがついたんだろうなって、安心してる。』

「……。」


そう言って、小島さんは清々しい笑顔でロッカーの扉を閉めた。


『何はともあれ、咲坂さんは私のことなんて全然気にしなくていいから。……だから、…まぁ、私が言うのもなんだけど、今日くらい岩崎先生に何かあげてよ。それを受け取るか受け取らないかは、岩崎先生が決めることだしさ。』

「……うん、そうだね。」

『じゃあ、お疲れさま!』


更衣を終えた小島さんは、ハツラツとその場を後にしたのだった。