嫌だ嫌だと言ったのだけれど、先日薫からわざわざ私宛に贈られたオーダーメイドのメイド服一式を見れば、着ないわけにもいかないわけで。

完全に、薫の思惑にハマった私。

口よりなにより、物を言わすのはお金だと痛感した今日この頃。


――それはともかく。

目の前の煌は、メイド服に身を包んだ私を見て固まったまま、何を言うわけでもなければ、動く気配すらない。

……え、ちょっと。

これはさすがに、ダメだった…?

あまりの似合わなさに、引いてる…?


「こ、煌…?だいじょう――」


大丈夫?と、聞こうとした瞬間、今まで石のように動かなかった煌が、むくっと白いソファから立ちあがった。


「こ、う…?」


私を見ているのか、見ていないのか、よく分からない煌の瞳に見つめられて、私の方が固まっていると、彼は私に背を向けて、どこかへ消えてしまった。