「ん…っ」

『もう泣くな。』


言葉はどこか威圧的なのに、声や涙で濡れた頬を拭ってくれる先生の手は優しさを含んでいて。

もう不安がらなくていいと、先生がそう言ってくれている気がした。


『――原稿があがってなかったのは、ゴメン。』

「……!」

『今日がクリスマスイブだって気付いたのも、茉子が家に来て、パソコン開いてからだったし、正直、何をすることでもないと思ってた。』


いつもなら聞くことができない、先生の本音。

のらりくらりと自分のことを話すことを避ける先生が、こんなに自分の想いの内を明かしてくれるのは、年に数回くらいしかないほど貴重だ。


『……でも、それじゃダメだって、さっき思った。』

「――…!」

『はぁ…茉子の淋しそうな顔見て気付くなんて、だせーし、格好悪ぃし、…なさけねーって自分でも思う。…けど、』


”もし、許してくれるなら――…クリスマス、俺とやり直してくれないか。”


先生の、そのストレートな言葉に、私が返す言葉は、もう考えなくても決まっていた。


『ッ――…!』


あまりにもうれしくて、私は衝動的に先生の背中に腕を絡める。


「――はい。先生と…クリスマス、一緒に過ごしたい…です。」


その瞬間、抱きしめあう私たちのすぐそばにある、一番大きいクリスマスツリーから深夜12時を告げる鐘が鳴り響いた。

それは、イブが終わり、12月25日、クリスマスがやってきたことを知らせる音。

クリスマスは、まだ終わらない。



(……クリスマスケーキ、買うか。)

(あ、あの…!ケーキ、もう買ってあるの…///)

(!じゃあ…帰るか、茉子の家。今日は、泊めてくれるんだろ?)

(っ~~…は、い///)