なんだこの変わった名前のやつ。



座席表の一覧を見て、たまたま目に入った。





川端…モアイ?





キラキラネームとやらが流行っているこの時代だけど、
俺らの世代にもいたのか。キラキラネーム。




一体どんなやつだと思って座席表に書いてある場所に目を移すと、



そこには目がクリッとしていて
髪は少しウェーブがかかっている栗色のロングの女の子が
隣の席の友達と仲良くおしゃべりをしていた。




普通に可愛いと思う






………モアイ……






名前と顔のギャップ強すぎんだろ…





でも、本人が自分の名前を気に入っていたら申し訳ないと思い

特に何も考えないようにして
俺はそのモアイさんの前にある自分の席に座った。








ーー 今日から本格的に部活が始まる。


俺、小笠原圭吾(おがさわら けいご)は野球部に入部した。


特別強いチームではないけど、
ここを選んだ理由の大半は
家から1番近い学校ってこと。


俺は5歳の頃から野球を始めたいわゆる野球馬鹿で、
今まで野球しかしてこなかった。


この西高校の偏差値は、県内でも高い方。


なんで俺の頭でこの高校に入れたんだとよく言われるけど
かろうじて野球のおかげで入れたようなものだ。

俺に野球がなかったら、きっとこの高校にも入れてなかったと思う。




に、しても



俺の勝手な想像ではもっと
眼鏡をかけた地味オーラ満開のやつとか、
制服の着こなしは必ず統一されているとか、
髪の色は加工しちゃいけないとか、

そういう学校だろうと思ってたけど…



……なんだこの学校



塩顔とかソース顔イケメンばっかだし
カーディガンも赤やらベージュやらピンクやら…

まるでいつかうちの親が見てたドラマみたいな学校じゃねぇかよ…



なのにみんな頭いいんだろ?
やっぱすげぇな、この学校。



そりゃ女子に人気なわけだ…





___ガラッ


勢いよく開いた教室の前のドアから
担任の北見(きたみ)が顔を出した。



「よぉーし!お祝いテスト始めるぞー!」



その声に散々盛り上がっていたクラスの雰囲気が一気に沈黙化した。


……はぁ?おいおいうそだろ


こんなに教室がざわついてるってことは、
誰も知らされてなかったのか。


いくら規則が緩くても
やっぱ勉強だけは譲れないもんなんだな。


テストなんて俺が嫌いなものワースト3位以内には入るほどなのにさ…


お祝いっていうなら、
テストなんてしねぇだろ!ふつう!


これのどこがお祝いなんだと校長に突っ込んでやりたい。




「先生俺そんな話聞いてないっすよ!」



晃平(こうへい)がすかさず声をあげた。


晃平、あいつさすがだな。


「当たり前だろー?これはお前らの実力を見るためのテストだからな。さ、全員早く席につけ!」


晃平の必死の抵抗も全部無視して
抱えていた紙の束を楽しそうに配り始める北見。



クラスはどよめきから
ついにブーイングに変わった。