「おはようございます。」





店に入ってすぐ、聞こえてきた
機械的な挨拶。


黒いスーツと頭髪料でガチガチに固められた頭が、いかにもってかんじ。

ついでに、ベストも。



これも、いつもと変わらない。



あたしは機械的な挨拶を、鸚鵡のように返すと、そそくさとロッカールームへ向かった。




ここはキャバクラ。

ただのキャバクラではなく、ここらへんではかなりの有名店だ。

長年この街でトップに君臨している。

働いてるあたしがいうのもおかしいのかもしれないけれど、結構な粒ぞろいだ。


「邪魔。」

少なくとも、見た目は。


氷のような声が、背後から刺さり、振り返った先には、、、アリサ。


jewelのNo. 1キャバ嬢だ。


本日も、お綺麗で。

ただ、性格は最悪だ。

もっともこの世界でのし上がってきた彼女には、そうならなければいけない何かがあったのかもしれないし。
自分でも思うけれど、ちやほやされてしまえば、誰だって人間。はなが伸びていくのは仕方ない。



「おはよう」


一応、それでも挨拶だけはしておく。

性格の悪いアリサ。
好きにはなれないけれど、不思議なことに、嫌いにもなれなかった。