大切なあなたと記憶。

「ちょっと待ってろ、な?」

そう言って彼は部屋から出て行った。

彼が出て行って改めて部屋を見てみる。

白を基調としたシンプルな部屋。

ベッドと、本棚、そして写真ぐらいしかない。

私はフラフラとしながらもベッドから降りて写真の近くまで行った。

写真に写っているのは全て私と彼。

写真の中の私はすごく楽しそうに笑っている。

私、こんな顔して笑えるんだ。

そして横の彼も…

「楽しそう」

口に出すとなんだか虚しくて、私の記憶はなんでなくなっているんだろう。

自分に腹がたちそうだった。

でも、事故とかじゃないしもしかしたら早く思い出せるかも、なんて期待してる自分がいる。

「ごめん、少し手間取った。」

彼の手にはお盆に乗った鍋があった。