力の入らない両手は相変わらずカナデくんの手に添えられ、剣を手放すことを許してくれない








さあさあと、刃の先端を自身の胸に近づけるその仕草に淀みはない









どうしたら・・・
どうすればいいの・・・?







子供のように左右に振る私をカナデくんは、神王は、優しくも覚めた眼で見つめる








どうしようも、ないの・・・?








絶望しかけた私を救ってくれたのは









「逃げんじゃねえよ、カナデ」








ずっと黙っていて、その気配さえも完全に消していた、シオン様








「死によって辛い現実から逃げられるってか?

そんなに現実甘くねえよ」








「・・・・・シオン・・・・・
黙っていたからついに僕とユーリのことを黙認してくれるようになったのかと思いましたよ」









私を見るときだけに眼に宿る優しさは今回も例に違わず消え失せた









それに慣れきったようなシオン様は、余裕の表情で笑った











「黙認・・・・?
ハッ、なにをぬかすかバーカ

カナデが何を考えているのか知りたかったんだよ

だが・・・わかったことは一つだけ



カナデが正真正銘の甘ったれだってことだ」









鼻で笑うシオン様








さっき殺されかけたことを憶えていないのだろうか・・・。







そしてやはり、カナデくんからは負のオーラが漂い始めた







『カナデくん・・・』







「ユーリ、さっきはシオン助けましたが、今回はダメみたいです


こいつはユーリと僕の仲を邪魔する虫けら

排除しなければ」







私の手から剣を抜きとり、すっとシオン様に向ける







刃を向けられているというのに、シオン様本人は至って冷静だった








「そうやって逃げるなよ

嫌なことは全部消して、幸せなことだけで身の回りを埋めたいってのかよ」








核心だけを確実に突いていく








それは当然、カナデくんの心を削っていった