どうして?







 どうして、レンくんの王冠を、奏くんが?








 唖然と奏くんを見つめていると、シオン様は、笑いながら親しげに話しかけた








 「よおカナデ・・・久しぶりじゃねえか」








 「そうですね、シオン。随分と時が経ちましたから」









 奏くんもにこやかに応じた








 友人?顔見知り?知人だったの??








 どうだったとしても、理解が追いつかない










 いつ?何をきっかけに?









 『どう、して・・・・』








 ふらり、頭が飽和状態になり倒れかける








 
 そんな私をシオン様が抱きとめた








 顔の近さに一瞬胸が高鳴ってしまった








 『あ、ありがとうござい…』
 「シオン、やめてください汚らわしい」






 
 感謝の言葉を言わせたくないかのように自らの言葉を被せ、奏くんはふわっとこちらに飛んで来た










 そして、私を横抱きにしてシオン様から距離をとった










 「僕が連れてきたんですからね、魔王風情が調子に乗らないで下さい」










 睨みつけながら言うその言葉は、あからさまにシオン様を馬鹿にしていた








 
 生きていた頃から、こういったことは見逃せない私は、つい反射的に言った









 『そんなこと言っちゃ駄目だよ!今すぐ先の言葉を撤回して!!』








 「ユーリ、いいんだ。気にしていない」







 シオン様は、悲しげな瞳で笑った







 それでも、やはり納得がいかない







 私は食い下がった







 『でもっ・・・!!』








 「ユーリ!!!」









 突然の大きな声に、体が跳ねる









 シオン様がこんな風に私の名前を呼んだことが、前にあっただろうか?









 ・・・ないからこそ、驚いてしまった









 『ごめん・・・な、さい・・・』









 涙で掠れた声で謝ると、シオン様はバツが悪そうに顔をそむけた











 「結莉先輩・・・いえ、ユーリ、謝ることなんてありませんよ」









 奏くんは、最早見慣れてしまった、私だけに向けられた顔で笑う










 『でも、悪い事をしてしまったら、謝らなくちゃ・・・』







 
 再びごめんなさい、と言うと、ふっと奏くんから笑顔がなくなった








 「ユーリは、どうしてそんなに頑ななのですか?

 ここには、ユーリの父なんていませんよ?」











 ・・・父がいないから、良い子じゃなくなっていいわけじゃないよ












 良い子じゃないと、愛は与えてもらえないんでしょ?











 奏くんが好きになった私だって、外面ばかり良い、偽った私なんだから