『奏、くん・・・』







すっと、彼が近づく気配がした






名前を呼んだらすぐに来てくれるなんて、父は絶対になかった








「どうしたんですか?」








『ずっと・・・ずっと、私と一緒にいてくれる・・・?』








私を、一人にしない・・・?







うまく喋ることが出来ない口を懸命に動かし言うと、奏くんが笑う声が上から降ってきた








それから、奏くんの掌が、私の頭をゆっくりと撫でていく







「あたりまえですよ。


たとえ、貴女が嫌でも離れたいと願っても 

そう・・・僕のことが、嫌いでも





僕は貴女の傍にいます」










私は、ひどく安堵した






手に入らなかったものは、ここにあったんだ







幼い頃、父と母の間で眠っていたときのような






満たされた感覚








私には不相応なほどの幸福を感じながら







抗うことをやめ







自ら意識を、手放した










-Merry Dead Endー