「みぃちゃん、お母さんちょっと先生の話を聞きに行ってくるから。なんかあったら連絡して」

「うん、わかった」

 お母さんが、あたしの頭を撫でて病室を静かに出て行った。

 高校生活に少し慣れてきた6月。

 大粒の雫が病室の窓を打ち付けている。

 大好きなイラストを描いていても、退屈なものは退屈だ。

 少し病院内を回ろう。

 大きな病院だけど、見たことないところだってあるはずだ。

 あたしが入院している棟に、特別治療室がある。

 いつもあたしが診察をしてもらうところ。医師も決まっている。

 そこに差し掛かったときだった。

「そんなっ!!先生!!みぃちゃんはまだ・・・・・・っ」

 この声は、お母さん?

 泣き叫んで、必死になにか訴えるお母さんの声。

 特別治療室の扉に手をかけた時だった。

「落ち着いて。美咲ちゃんは長くて23歳までです」

 長くて・・・・・・23歳?

 何?何の話をして・・・・・・。

 そんなことを考えていたら目の前の扉が開いた。

「みぃ、ちゃん・・・・・・?」

 目が真っ赤に腫れ上がったお母さんが、あたしを見つめた。

「お母さん・・・・・・23歳って?」

「みぃちゃんっ!!」

 お母さんは再び泣き始めて、あたしにしがみついた。

 点滴をしていないほうの手で、お母さんの背中を撫でることしかできない。



 やっと泣き止んだお母さんから、病室で話をきいた。

 涙が止まらなくなった。

 退院して学校に行ったら、どんな顔して過ごせばいいの?

 優ちゃんとおばあちゃんになっても一緒にお出かけしようって。

 廉太くんにだってまだホントの気持ち。

 あたし、おばあちゃんになるまで生きたかった。

 優ちゃんや廉太くん、みんなと集まってお酒を飲んだり語り合いたかった。

 どうして、23歳までなの・・・・・・?

 もっと生きたいよ。もっと、もっと・・・・・・!