双姫 Ⅰ



「ふぅー…危機一髪だったね?」


『……どうして止めた。類!』


振り下ろす直前、
類は私の手からナイフを蹴り飛ばした。


「前に「東条を殺しそうになったら止める」
そう言ったよね?

朱音、自分を見失っちゃ駄目だよ。」


『…ッ……そんなの綺麗事よ!
言ったでしょ?

『憎くて憎くて堪らない。
殺したい程コイツを恨んでる』って!!!!』


そう簡単に気持ちは切り替わらない。

幾ら自分に言い聞かせたって
駄目な時だってある。


「うん、分かってるよ。だからこそ止めるんだ。

俺達は今の朱音が好きだから
失いたくなくてここに居るんだよ?

お願いだから遠くに行かないで。」


ズルいよ。

そう言って皆は私を引き止める。
そのせいで私の心は揺らぐんだ。

グラグラと生きたいと思ってしまう。

蒼空は死んだのに。


『うッ………蒼空…会いたい…ッ。
うあああああぁぁぁーーーーー!!!』


殺したい。

でも、殺しても蒼空は戻らない。


あの時、今みたいに力があれば

私が強かったら、

私が引き返しとけば、

私が死んでいれば、

私じゃなく、蒼空が生きていたのに。