さてさて、どうしたものか。
私の目の前で大好きな野球を見ながら、私の作ったカレーを無表情に食べ、私が話しかけても相槌どころかクスリともしない、この愛くるしい男。
私はこの彼氏らしき男に、いつ別れを切り出したらいいものか、ずっと考えていた。

別れる理由がない。

ただ、付き合っていく理由もない。

結婚の予定もなく、1年以上の間、セックスもなかった。

これはもう終わっているに違いない。
なのに、自分から別れを切り出す勇気もない。

このままでいいと思うこともあるが、このままではダメだと思うこともある。

こうやってあーだこーだと言いつつ、鬱屈とした毎日を過ごす自分を「残念だな〜」と、何故か他人事のように見ていた。

「醤油!」
彼の言葉に、黙って私はお醤油を彼の皿に足してあげる。

よし!
私はとりあえず、上手に別れる方法を考えることにした。
そして、いい方法を思いつくことができたら、私はこの男と別れてみようと決めた。

恋愛の良し悪しを決定するのは、どう過ごしたかではない。
どう『別れた』かなのだと思う。

もしかしたらいい過ごし方をしたら、必然的にいい別れ方ができるのかもしれない。
でも、私はいい別れ方をしたことがないから、わからないのだ。

そう。私は別れるのが下手なのだ。

「飲み物!」
家政婦ロボットは、男のコップに水を注ぎながら、意味もなく笑った。

目の前のこの最愛の彼氏と別れるためにどうすればいい?
私が別れ下手なのは、きっと過去の別れ方に問題があったはず!

そうだ!
まずは、過去の別れ方について振り返る。
そして敗因を探し、反省するのだ!

そうすれば、今度こそ上手に別れられるに違いない!!