「寂しい思いさせることが、これからもきっとあると思う。だから泣かせることもあるだろうけど、やっぱり傍で笑ってて欲しいんだ」


いつも以上に真剣な顔で話す悟さん。


そんな風に見つめられると動けなくなる。


悟さんは私の頬を両手で包み込むように触れながら


「卒業したら、俺と結婚してほしい」


って言った。


“結婚”……。


「私で、いいんですか……?」


「愛がいい」


フワッと笑う悟さんを見て、また涙が溢れる。


今、初めて気付いた。


悟さんの手から香る甘い匂い。


ずっと一緒にいたのに…。


泣き止まない私を、悟さんは優しく抱きしめてくれる。


「これから一緒にお祭り行こっか」


耳元で悟さんが囁く。


私がコクリと頷いたら、小さく笑う声が聞こえた。


今日からまた、悟さんを知っていくんだ。


夏の夜に知った、大好きな人の甘い香り。






END...