「あ、愛!」


私に気付いた優月が小さく手を振る。


「うわーん。優月ーー」


「えっ何?!どうしたの愛…」


突然抱きついた私に驚いたのか、優月はよろけながら訊ねる。


とりあえずお店に入り、私たちは窓側の一番奥のテーブルに座った。


「またドタキャンされた……」


私の話を聞きながら、優月はうんうんと頷いてくれる。


「碧依(アオイ)さんはドタキャンなんてしないでしょ?悟さん…私と付き合うの飽きちゃったのかな…」


「そんなことないよ。悟さんもちゃんと愛のこと好きだよ。ねぇ、今週の土曜日に隣町でお祭りがあるでしょ?4人で行かない?」


優月は本当に優しくていい子。


碧依さんっていう悟さんの友達と付き合うようになって少し変わった。


前は人に合わせてる感じだったけど、今は本音をぶつけつくる。


嬉しそうに「碧依さんのおかげ」って言ってたっけ。


「ねぇ、優月は碧依さんのどこが好き?」


私が聞くと、顔を赤くして「手」って答える優月。


「手?」


「うん。碧依さんの手ってね、甘い匂いがするの」


フワッと笑って話す優月がうらやましく思えた。