風鈴が風に揺れて、チリンと音を鳴らす。
今年の風は生ぬるくて、とても気持ちがいいとは言えない。
「え…今日もダメなの…?」
『ごめん愛(チカ)。仕事頼まれちゃって、今日行けそうにないんだ。本当にごめん!』
電話口で謝る彼氏の悟(サトル)さんは、いつも仕事優先で、私のことなんて後回し。
それで今日もドタキャン。
どうせ私のことなんてどうでもいいんだ…。
私たちが付き合い始めてもうすぐ3年になる。
私よりも5つ年上の悟さんは、チョコレート菓子を作る仕事をしてるんだ。
お店で働いてる姿を見て、一目惚れしたの。
後ろで結べるくらいの少し長い金色に近い髪も、笑ったときに眉を少し下げるのも、名前を呼んでくれる声も、みんな好き。
好きだけど、それはきっと私だけ…。
ケータイを握りしめて、親友の優月(ユヅキ)に電話をかける。
『愛どうしたの?』
「優月!暇だったら今から付き合って!」
『う…うん』
OKの返事をもらい、さっそくいつも行くお店で待ち合わせすることにした。
待ち合わせ時間の5分前。
お店に行くと、優月はもう待っていた。