おいてけぼりティーンネイジャー

女の子は長いつけまつげをくるんと上向きに上げようとしてるけど、男がみんなそんなフランス人形のようなまつげが好きなわけじゃない。

少なくとも俺は、アリサのアンニュイなまつげが大好きだ。
そのまつげに、まぶたに口づけたい。

……中学生の俺にはなかった欲情がこみ上げる……ライブの後の高揚感もあったのだろうが。

「『ひどい男』って『イイ男』の代名詞だよな。アリサ。君は本当にきれいになったね。いや、変わらないな。あの頃も君はきれいだったから。」
俺の言葉にアリサは赤くなり、マネージャーは肩をすくめて去っていった。

2人きりになってから、俺は楽屋にアリサを連れて入った。
「俺、ずっと君に謝りたくて。せっかく見に来てくれたのに、みっともないところ見せてしまって、ごめんね。怖かっただろ?」

そう言うと、アリサは顔をゆがめて泣きそうな顔になった。
「違う。私が暎くんに謝りたかったの。あの日、私、朝から体調が悪くて、ずっと気持ち悪くて座ってられなくて……暎くんの出番に間に合わなかったの。スタートしたことを知って慌ててスタンドに戻ったんだけど……もう暎くん、倒れてて……。」

え!?
「見てなかったの!?あ、そうなんだ!なんだ!よかったよ!俺、てっきりアリサに嫌なもの見せてしまったんじゃないかって、トラウマになったんじゃないかって心配だったんだ!そっか~!マジで、よかった!」
長年の心のつかえが、スーッとおりた気がした。

でも、そんな俺に、アリサは両手で顔を覆って泣き出した。
「なんで、そんなに優しいの……。私、ずっと、謝りたかったのに。ちゃんと応援したげなかったから、あんな大惨事になってしまったんだって。いつか暎くんが復帰できると思ってたのに……いつまでたっても出てこなくて……走ることをやめたなんて信じられなくて……。ごめんなさい……」

俺はアリサの言葉に心底驚いた。

「あのさ。俺がアキレス腱切ったのって、結局のところ、運が悪かっただけだと思うぜ?少なくともアリサのせいなんてことは全くないから!一切ないから!……てか、何でそんなことで自分を責めんだよ!」

俺は、そう言いながら、自分のことを思い出して苦笑した。
……わかってる。
卑屈になっちゃってるんだよな。

アリサと同じように、俺自身も自分の不注意とか気持ちが入ってないせいでこんな怪我をしたって思い込んで勝手に一人でどん底まで落ち込んだもんだ。

でも、普通に違うだろ。

俺は、前を向いて走ってるんだ、斜め後ろの奴が俺を道連れにこけるのを避けることなんかできるわけない!

そして、アリサがスタンドにいようがいまいが、事故の発生にはなんの関係もない!

そんな当たり前のことを咀嚼できず、俺達は離れ離れになってしまったんだ。