おいてけぼりティーンネイジャー

事務所の束縛がなくなった俺達は、地道にオリジナルソングを作ってライブハウスで歌いはじめた。
いろんな楽器……それこそ教授お手製のバロック楽器なんかも取り入れて、自分達が楽しいと思う音楽を作って演奏し続けた。

石の上にも三年、と言うが、俺達が自分達の音楽で再デビューさせてもらえる事務所とレコード会社と契約したのは、最初のデビューから4年後。
ちょうど大学にまともに通っていれば卒業できる頃だった。
……まあ、3人ともろくに出席しないまま……結局中退してしまったけど。

再デビューは、俺が書いた曲を、尾崎がアレンジし、茂木がメインボーカルをとった。
楽器は気分で変えたが、珍しいほうが受けると言われてテレビ番組では俺がバロックギター、尾崎はヴィオラダガンバを弾きながらコーラスを付けた。

同じ曲を、ライブハウスではアコースティックギターやエレキギターに持ち替えることもあった。
まるで遊びの延長のように、俺達はライブで新しい音楽を試み続けた。

客が増え、ファンが増え、ライブするハコが大きくなっていく。
やればやるほど手応えを感じることができた。
俺達は、いいステージを作ろうと、がむしゃらにがんばっていた。


あれは、再デビュー後2曲めを発売して間もなくだった。
いつも通りライブハウスでライブをしていて……彼女を見た。

アリサ?
まさか、ね。

最初は、似てるだけだと思った。
でも、明らかに他の客やファンとは反応が違う。

青白い泣きそうな顔でじーっと俺を見てる。

……さすがにこんな商売をしてると、女の子からの熱い視線は日常茶飯事だが……そういうのともまた違う。

悲しい瞳だ。

俺は、確かめたくなって、曲の間奏中にマイクを持たずに客席に降りてみた。
まっすぐアリサらしき子のところへ行くと、小声で行った。

「久しぶり。元気だった?体、大丈夫?」
さすがに周囲にはまる聞こえなので、騒然となった。

俺は、アリサらしき子だけを見つめて、周囲の客やファンも、怪訝そうなステージの2人も視界から消した。

彼女は、両手で口をおおって、大きな目を見開いた。
その仕草と表情で確信した。
ああ、アリサだ。
あの頃のままだ。

「あとで話したい。帰らないで、楽屋に来て。」

俺はそう伝えるだけ伝えて、ステージに戻った。