茂木の歌は、本気ですごかった。
まず、声がイイ。
美声だ。
俺みたいに高くて珍しいだけじゃなくて、澄んだ綺麗な声。
しかも、上手い。
英語の発音もすごく綺麗だ。
「茂木は耳がいいんだよな。聞けばすぐ覚えるらしい。」
へえ!
「うらやましいよ。俺なんか不器用で。何でも文字にしないと頭に入ってこないもん。」
「いや、一条の声も武器だと思うよ。」
美味そうなソーセージ山盛りの皿と、チャーミングなじいさんを伴って尾崎が入ってきた。
「一条。こちらが、バロック楽器を作るのが趣味の大学教授の大家さん。で、これが、あのガット弦を作る時に、長さが足りなくて無駄になってしまった羊の腸。」
「……で作ったソーセージ。なかなかのもんですよ、2人とも。いかがですか?」
開いた口がふさがらない。
ギターの弦を作った残りで、ソーセージ!?
俺はすっかりこの風変わりな連中の虜になった。
「え!?教授って、哲学の教授なのか!?」
秋。
尾崎が申し込んだ音楽コンクールに出ることになった俺達は、グループ名を教授に付けてもらうことにした。
何と言っても、無料(タダ)でスタジオのみならず楽器までちょいちょい借りている大恩人だ。
教授の付けた名前は、「IDEA(イデア)」。
俺は胸が高まるのを押さえられなかった。
イデアの世界……とっくに諦めた甘美な時間。
もう俺には無縁のものだと思っていた。
「不思議なもんだな。IDEAって名付けてもらえただけで、自信がでてきた。俺達、入賞ちゃうんじゃない?」
冗談のつもりでそう言ったのだが、俺達は、本当に入賞してしまった。
しかもそのまま、とんとん拍子に事務所が決まり、デビューすることになった。
……世間知らずなただの大学生3人は、周囲の大人達の言いなりになり、自分のないままに実力派アイドルというわけのわからない路線で売り出された。
似合わない歌謡曲を宛てがわれ、ギターを弾かせてもらえず、ハンドマイクと下手なダンスまでやらされて、テレビに出る。
もちろん、意味のない口パク。
ただテレビやラジオに出演し、営業に出て回り……鳴かず飛ばずのまま、2年で契約解除となった。
あっけないもんだ。
でも、学生の気楽さなのか、俺達に悲壮感はなかった。
いや、たぶん俺1人なら、完全に打ちひしがれて、アキレス腱の時のようにまた挫折を味わい、音楽をやめてしまったかもしれない。
でも、今回は尾崎と茂木がいた。
俺達を取り巻く環境が変わっても、仲間3人は全く変わらない。
3人で、色んなジャンルの曲をコピーして遊んでいると、何もかも忘れて夢中になれた。
まさに、俺達はイデアの世界にいられた。
まず、声がイイ。
美声だ。
俺みたいに高くて珍しいだけじゃなくて、澄んだ綺麗な声。
しかも、上手い。
英語の発音もすごく綺麗だ。
「茂木は耳がいいんだよな。聞けばすぐ覚えるらしい。」
へえ!
「うらやましいよ。俺なんか不器用で。何でも文字にしないと頭に入ってこないもん。」
「いや、一条の声も武器だと思うよ。」
美味そうなソーセージ山盛りの皿と、チャーミングなじいさんを伴って尾崎が入ってきた。
「一条。こちらが、バロック楽器を作るのが趣味の大学教授の大家さん。で、これが、あのガット弦を作る時に、長さが足りなくて無駄になってしまった羊の腸。」
「……で作ったソーセージ。なかなかのもんですよ、2人とも。いかがですか?」
開いた口がふさがらない。
ギターの弦を作った残りで、ソーセージ!?
俺はすっかりこの風変わりな連中の虜になった。
「え!?教授って、哲学の教授なのか!?」
秋。
尾崎が申し込んだ音楽コンクールに出ることになった俺達は、グループ名を教授に付けてもらうことにした。
何と言っても、無料(タダ)でスタジオのみならず楽器までちょいちょい借りている大恩人だ。
教授の付けた名前は、「IDEA(イデア)」。
俺は胸が高まるのを押さえられなかった。
イデアの世界……とっくに諦めた甘美な時間。
もう俺には無縁のものだと思っていた。
「不思議なもんだな。IDEAって名付けてもらえただけで、自信がでてきた。俺達、入賞ちゃうんじゃない?」
冗談のつもりでそう言ったのだが、俺達は、本当に入賞してしまった。
しかもそのまま、とんとん拍子に事務所が決まり、デビューすることになった。
……世間知らずなただの大学生3人は、周囲の大人達の言いなりになり、自分のないままに実力派アイドルというわけのわからない路線で売り出された。
似合わない歌謡曲を宛てがわれ、ギターを弾かせてもらえず、ハンドマイクと下手なダンスまでやらされて、テレビに出る。
もちろん、意味のない口パク。
ただテレビやラジオに出演し、営業に出て回り……鳴かず飛ばずのまま、2年で契約解除となった。
あっけないもんだ。
でも、学生の気楽さなのか、俺達に悲壮感はなかった。
いや、たぶん俺1人なら、完全に打ちひしがれて、アキレス腱の時のようにまた挫折を味わい、音楽をやめてしまったかもしれない。
でも、今回は尾崎と茂木がいた。
俺達を取り巻く環境が変わっても、仲間3人は全く変わらない。
3人で、色んなジャンルの曲をコピーして遊んでいると、何もかも忘れて夢中になれた。
まさに、俺達はイデアの世界にいられた。



