おいてけぼりティーンネイジャー

「まあ、俺達、留守がちだし、子育てにあんまり協力できないしね。戦力外?」
相変わらず浮き名を流して落ち着かない尾崎にそう言われた。

「一条、不器用だし、お風呂に入れてやるのもダメだろ。」
茂木にそう言われて、グッと言葉に詰まった。

正直、首がすわるまで、抱っこも怖い。
あんなに柔らかくてちっちゃくてすぐ泣くなんて、反則だ!

もちろん、我が子はかわいい。
めちゃくちゃ、かわいい。
でも、知織が俺より息子をかわいがるのは淋しい!

「……ワガママだなあ。……まあ、今更だけど。」
2人にからかわれて、憤然とした。


明け方に帰宅すると、知織は息子に添い寝していた。

パッと息子の目が開いた。
「光人(りひと)~。おはよ。」

ニコ~ッと、息子が俺を見て笑った。
うれしくって抱き上げようとしたら、泣かれてしまった。

慌てて知織が起きた。
「暎(はゆる)さんかぁ。びっくりした!光人(りひと)くんもびっくりしちゃったかな。」

息子をあやす知織は神々しいぐらい美しかった。

……暎さんかぁ?
やっぱり、俺、二の次になってる!

息子を抱く知織を背後から抱きしめた。
「ねえ、俺のこと、ちゃんと見てる?俺、放置されてるよ。淋しいよ?おいてけぼりにされてるよ?」
情けないかもしれない。
でも、本音だ。

知織は、息子を大事にベッドに寝かせてから、両手で俺の手をポンポンと軽く叩いた。
「あほやね。暎さんのこと、放置なんかできるわけないやん。こんなに手がかかるヒト。」

そう言って、くるっと俺のほうを向いた知織の笑顔は、やっぱり以前とは違った。
いつも淋しそうで不安そうだった少女は、いつの間にか幸せに満ちていて、慈愛の表情で俺を見つめていた。

「……幸せなんだね?」
俺はそう確認して、ほっと息をついた。

「当たり前やん。大好きな暎さんと、暎さんそっくりの光人(りひと)といられるのに。毎日すごく幸せ。……まさかキラキラネームを付けられるとは思わんかったけど。」
知織はそう言って、最後は苦笑した。

確かに息子の名前を決めたのは、俺だ。
両方の親に反対されて知織も困ってたけど、結局押し切ってしまった。

「だって、りひと!って顔してたんだもん。」
俺の言葉に、知織はほほえんだ。

「……ほんまに、暎さんは……いくつになっても、父親になっても、暎さんやわ。困ったヒト。」
「困る?嫌い?」
心配そうにそう聞いた俺の頬を、知織の両手が包み込んだ。

「大好き。ずっとそのまま困った少年でいて。」
たまらず、俺は知織の唇を貪った。




結婚して、出産して、知織は大人になった。
でも俺は、中年と呼ばれる歳になっても心はティーンネイジャーのまま。

いつまでも、知織を困らせて、手こずらせて、俺をかまわずにはいられないようにしてやる。
確信犯。
かまわない。

「一生、放さないから。」

何度も何度も繰り返してきた言葉を、飽きもせずに俺は真剣に伝えた。


中二病と言われても、それが俺だから。