おいてけぼりティーンネイジャー

「峠くんは、将来、独立するつもりなの?」
夕食の仕込みをしてくれてる峠くんに尋ねると、彼はうなずいた。

「じゃ、その時は声かけてね。俺達すっかり峠くんのファンだから。……でもなるべく長くうちの面倒もみてよ。もちろん引っ越しても来てね。」 
峠くんは、はにかみながらもうれしそうな顔をした。

その夜から、食卓に肉が登場した。
知織が、肉を食うと眠くなって勉強できないから、と、今まで峠くんは控えていたそうだ。




3月10日の正午。
インターネットで東大の2次試験の合格者が発表された。
知織は積年の夢を叶えた。
由未ちゃんも一緒に合格したらしく、電話で大はしゃぎしていた。

峠くんは、赤飯とすき焼きを準備してくれた。
せっかくなので、峠くんも誘って3人で鍋をつついた。




3月15日、知織は高校を卒業式した。
京都から大村さんと裕子がやってきて式に参列したそうだ。

その夜、庭が見事なホテルのレストランで、両家の初顔合わせというものを行った。
うちの両親が、まず裕子に謝罪したため、大村さんが少し機嫌を損ねてしまったけれど、裕子と知織に宥められて落ち着いてくれた。

あとは、とんとん拍子に話が進んだ。
既にそのつもりで、両親は結納の準備を進めてくれてたし、俺も万全だ。
気が早いようだが、翌日ホテルで結納を済ませてから、大村さん達は京都に帰った。

そして翌週、京都の寺で結婚式を挙げてもらった。
参列者は、お互いの近親者のみ。
知織の和装はとても素敵だったが、俺の羽織袴は微妙……髪を後ろで結んだら、総髪の武士のようになるかと思ってたけど……金髪はやっぱり似合わなかったな。

「おめでとうございます。どうか、おひいさまを末永くお幸せにしてさしあげてください。」
きらびやかな法衣で式の伴僧を勤めてださった暎慶(えいけい)さんがそう言いにきた。

「ありがとう。暎慶さんに一生ご迷惑をおかけしませんよ。」
2人でニヤリと笑い合った。




式の後、料亭で食事をした。
途中でマネージャーから電話があり、婚姻届が役所に受理されことと引っ越しが完了したことを報告してくれた。

「正式に、夫婦になったよ。」
俺がそう言うと、知織はにひゃら~っと、ここまで顔の筋肉ってゆるむものかと感心するぐらいうれしそうにデレた。
かわいすぎるだろ。

「一条知織。えへへへへ~。」
何度もそう言っては笑って、すっかりご満悦なようだ。

この笑顔を曇らせないのが俺の役目、だよな。

いつまでも……。