おいてけぼりティーンネイジャー

そして、夜。
事務所で、尾崎と茂木に報告した。
どんな反応をされるかちょっと怖かったけど、意外と2人は受け入れてくれた。

「いいんじゃない?30歳になって急に生活も女関係も落ち着いたから特別な女ができたんだろうとは思ってたよ。」
茂木はそう言って、おめでとう!と祝福してくれた。

「あっはっは!でも、まさか一条がそこまで若い子好きとは思わなかったよ。話、合う?今はいいけど、人生長いぜ?」
ひそかに離婚経験者の尾崎は心配そうにそう言った。

「歳は若いけど、中身は尊敬できる子だよ。もう4年半付き合ってるんだ。今更、話が合わないから離婚、はないよ。」

「……犯罪だよ、それ。」
尾崎のつぶやきに俺はニヤリと笑った。
「だから今まで待ったんだ。もういいだろ?まあ、CM契約があるから秋までは絶対バレないようにしなきゃいけないんだけど。頼むよ。」
最後にそう言って頭を下げた。

「了解。今度紹介してよ。」
「祝いぐらい言わせろよな。」
2人にそう言われて、俺は力強くうなずいた。  



翌日、知織を迎えに行った。
おじいさんもおばあさんも意外と喜んでくれてるらしく、湿っぽい空気になることも、嫌味を言われることもなかった。

「なんか、あっさりしてるな。」
車に乗り込んでから知織にそういうと、

「……私もびっくりしたけど、母の時にそういう感情は出尽くしたんやって。心配はしてはるやろけど。」
と苦笑いされた。

……納得。


「ただいまー、って気分。なんか、すっかりココが一番落ち着く場所になったみたい。」
そう言って知織は俺を見上げた。
「今日のご飯、何やろ?」

……かわいいなあ、もう。
俺も知織も、すっかり峠くんに餌付けされたな。

「そうだね……引っ越しても峠くんに来てもらえるように頼まないとな。」
「え!?引っ越すの?」
不安そうな顔をした知織に、新しいスタジオと東大に近いマンションに決めたいと話した。

「そう。わかった。暎さんの思うようにして。……私のことも考えてくれてるんやね、ありがとう。」
知織の笑顔はちょっと淋しそうだった。

「ココが好き?引っ越すの、淋しい?」
「うん。ちょっと。でもいいよ。次のお家が、私達の夢の家になるねんもんね。」

夢の家?
比喩か?

「知らん?『赤毛のアン』の続編。『アンの夢の家』。……さすがに乱読の暎さんでも、読まへんか?」
「……アニメは見たよ。児童書でも読んだ。」
「それじゃあかんね~ん。『赤毛のアン』は、続編・短編合わせて全11冊!後のほうがおもしろいねん。しかも英語の問題にもよくなるし。」

本の話になるとあいかわらずうれしそうな知織。

早く受験が終わるといいな。

毎日ニコニコしてて欲しい。