おいてけぼりティーンネイジャー

「あんた……付き合うてる時だけやのうて、ややこできても、結婚しても、知織に隠れてろゆーんですか?話になりませんわ。」

俺は言い訳もできず、ただ頭を下げるしかなかった。

「……秋になったら、公表するの?」
裕子に聞かれて、俺はうなずいた。

「CMの契約だけが問題だから、放映期間が終われば……」

俺の言葉に裕子は首をかしげた。
「別に公表しなくてもいいんじゃない?せっかくCMのおかげで一条くん、人気出てるんだし……仕事増えてるんでしょ?」

「まあ、そうだけど……知織が不自由なのは可哀想だから。」
俺がそう言うと、裕子が苦笑した。

「馬鹿ね。一条くんとの結婚を公表したほうが知織ははるかに不自由になるわよ。」
……そうかもしれない。

結論が出ないまま、顔合わせの日だけ決めて辞去した。




東京に戻ると、そのまま実家へ報告に行った。
「そうか!では知織さんの親御さんに挨拶に行かなないと。暦(こよみ)、暦。」
父はうれしそうに、暦本を開いた。

「いや、知織の二次試験が終わってから、ご両親が東京に来てくれるから。その時に結納の相談もしてほしい。」

「二次試験って……妊娠したなら無理して大学受験なんかしなくても……」
母は心配そうだ。

「うん。でも、ずっとがんばってきたから。受験辞めろなんて言えないよ。」
俺がそう言うと、義姉が肩をすくめていた。

「ずいぶんご大層ねえ。医大でも受けるの?」
馬鹿にしたような言い方に、カチンとした。

「東大ですよ。大村さんも東大出てますし、愛着があるんでしょう。」
義姉はぐっと口をつぐんでしまった。

「ほう~~~!賢そうなお嬢さんだとは思ったが、東大はすごいな。」
父の感嘆の言葉に、義姉はますますおもしろくなさそうだ。

「身近にそういうヒトができると、子供達にもイイ影響を与えるかもしれませんね。」
市会議員として忙しい日々を送っている兄がそう言ってから、言葉を継いだ。
「……知織さんが卒業したら、うちの市に入らないかな。初の女性助役になれるんじゃない?」
俺は慌てて手を振った。

「それ、知織に言っちゃダメだよ!真剣に悩むから!……たぶん1年遅れて学生生活スタートすることになるけど、なるべく自由にさせてやりたいんだ。」

「合コンや夜遊びもOKなの?」
「知織がするわけないでしょう。」
あなたとは違いますよ……と、馬鹿馬鹿しいことを言う義姉を呆れて見た。



受験勉強をしてても疑問点と興味を持ったことをメモって、受験が終わったら図書館で調べまくることを楽しみにしてる子だ。

……子育てが足かせになって勉強できなくならないようにしてやらないとな。