おいてけぼりティーンネイジャー

「いつか愛情が薄れることも、心が移ろうこともしょうがないってあきらめてしまうのは簡単やけど、やっぱり嫌やねんか。世界の移ろいやすい事象の背後には、永遠に不変のものがあるはず……知性があればちゃんとつかめると思うから。毎日の現象の積み重ねが永遠なら、少なくとも私は不変不滅を貫けるかな、って。」

知織らしい言葉だな。

「ソクラテス以前だね。」
俺が理解したことに安堵したらしく、知織は花のような笑顔になった。

「暎さんはIDEA(イデア)の活動でイデアの世界にすぐ飛翔できるけど、私にとってのイデアは暎さんなんやと思う。主体性ないこと言いたくないし認めたくなかったけど。」
ちょっと口惜しそうな表情を作ってから、知織はまた微笑んだ。
「でも私1人じゃ八方ふさがりで何年たっても改善できひんと思ってたことでも、暎さんはどんどん1人で突き進んでくれて……」

ご両親の反対のことか?
「そんなの、当たり前だろ?」

知織は首を振った。
「当たり前ちゃうよ。すごいことやで。暎さんいしかできひんこと。……尊敬してる。」

珍しく饒舌に俺を褒めてくれる知織に、俺は面食らった。
これが漫画や小説なら、死亡フラグか!?って疑うぞ。

「知織?」
意図がわからず、俺は知織を見つめた。

知織は微笑んだまま、ほろほろと涙をこぼした。
どうした!?
何で泣く?
情緒不安定はまだ続いてたのか!
抱きしめていいものかためらって、おそるおそる知織の両肩に手を置いてみた。

知織は首を右側に倒して俺の手の甲に自分の頬を擦り付けた。
「……無理やわ。私、今日は、受験終わるまで暎さんと逢うの我慢するって宣言しに来てんけど……無理。どうしても無理。死んでも無理。」

え?

……あ……それであの知織らしくない感情爆発だったわけか。

やっと理解できて、俺はホッとして笑ってしまった。

「馬鹿だなあ。今更、何言ってんの。」

俺と逢わないって言うのが嫌で俺に八つ当たりしたのか?
何かもう、知織がかわいくてかわいくてかわいくて……俺は、たまらず抱きしめた。

「むしろ、ずっと俺のそばで受験勉強しなよ。邪魔しないから。食事も……買って来てやるからさ。直前合宿。」

知織は涙ボロボロの目で俺を見上げた。

「……ほら。また。」

ん?

「暎さんは、八方ふさがりな私をイデアに導いてくれはるねん……」

そう言って、知織は俺にしがみついて声をあげて泣いた。




数日後、遅れていた生理が来たらしい。
ちぇ~~~~っ。