おいてけぼりティーンネイジャー

身支度をととのえてからリビングルームに行くと、知織が紅茶を入れてた。
「いい香り。今日は?……フラワー系?」
「うん。イングリッシュガーデンですって。」
しばし待って、ティーカップに注がれた紅茶の香りを楽しむ。

……なんだろう……これ。
飲んでみると、香りのイメージともまたちょっと違う。
甘い馥郁とした香りとすっきりした味わいのギャップがおもしろい。

「シナモン……薔薇……」
知織が目を閉じて鼻をくんくんさせながらそうつぶやいた。
かわいいな。
ちょっとした仕草にも目を奪われる自分に気づき、苦笑した。


「テスト勉強、もう、いいんじゃない?受験に集中すれば。」
余計なことかな~……と思いつつ、俺はそう言ってみた。

知織はちょっとびっくりしたような顔で俺を見て、首をかしげた。
「……成績下がったら、暎さんのせいにされるのに?」
「は?」

そんなこと気にしてたのか。
……まったく、この子は……。

俺はたまらず、知織をかき抱いた。

「ちょ……紅茶、危ないって。」
慌ててティーカップをテーブルに戻した知織の頬を両手で捉える。

「ごめん、俺のために手抜きできなかったって、知らなかった。」
俺、全然気づいてないけど、もしかして、まだまだあるのかな……知織に負担かけてること。

知織はふっと微笑んだ。
「……あやまらんとって。私が勝手にやってることやもん。恩に着せるつもりも、アピールするつもりもないわ。」
そう言ったあと、知織は続けた。
「たぶん、暎さんが思ってる以上に、私は暎さんのことが好きで……実は、自分の今の行動と目標全てが暎さんに所以(ゆえん)してるんやけど、そんなん逐一暎さんにアピったら、暎さん、逆に重く感じはるんちゃうかな。」

……そうなの?
いや、でも……今が決して俺の望み通りとは言えないんだけど……

「え~、じゃあ、もっと一緒にいたい。知織を抱いてたい。」
つい本音を言うと、知織は苦笑した。

「いや、そういう単純なことじゃなくて。もっと大局的に、ね。」
そんな風に言われて、俺はつい口をとがらせた。
「なんか、うまく誤魔化された気分。」

知織はため息をついてから、おもむろに言った。
「……これでも、私、暎さんに永遠を求めてるんやけどね……方法が違うだけで。立場が違うからしょうがないんかな。」

「ほんとに?」

うなずいた知織がかわいかった。


……うわ、うれしい。