おいてけぼりティーンネイジャー

少しの休憩時間の後、写経挑戦。
俺達の中で一番字の上手い茂木が一番真剣に取り組んでいた。
尾崎は最初は集中するけど、すぐ飽きちゃうんだよな。
もちろん俺は、書道は全然ダメ。

「暎慶さんは書道も上手いんでしょうね。」
書きながらそう聞くと、
「決して上手くはありません。必要にかられて反復練習で、何となく形になっているだけです。……一条さんのようにお話されながらの写経では意味ありませんよ。集中なさってください。」
と、怒られた。

「はーい。」
そう返事をして再び筆を取ると、暎慶さんはちょっと笑ったように見えた。

夕食は、ご飯、味噌汁、豆腐、梅干し、タクアン。
……これで朝までもつとはとても思えない。

「暎慶さん暎慶さん。夜、祇園、連れてってくださいよ。」
何を思ったか、食後に茂木が暎慶さんにそうお願いした。

さすがに暎慶さんは唖然としている。
「……修行体験に、来られたんですよね?」
「はい。22時就寝ですよね。その後で?みなさん、行くんでしょ?」
暎慶さんは肩をすくめた。

「え~。俺も行きたい。」
尾崎も首をつっこんだ。

「困ったかたがたですね。……一条さんだけかと思ったら、あなたがたも……」
暎慶さんはそこまで言って口をつぐみ、笑いをこらえているようだった。

しばらくして、暎慶さんは静かに言った。
「さすがに今夜はあきらめてください。また別の機会を作ってくださればお付き合いいたします。」

ガッカリする茂木と尾崎に、暎慶さんは小さな声で言った。
「……祇園は貫主の夜の法務みたいなものです。出くわすと厄介ですから我慢してください。就寝時に般若湯を差し入れしますよ。」

「暎慶さんってイイヒトだよね。」
夜のお勤めに向かう途中、尾崎がニコニコしながらそう言った。

「……ん~。俺もそう思う。……てか……」
俺は首をかしげて、尾崎を見た。
「尾崎、なんか、感じない?」
きょとんとしてる尾崎……俺の気のせいか。

少し後ろを歩いてた茂木がニヤニヤ笑ってる。
「一条も気づいた?……だよな~。」
「やっぱり?な~!」

俺と茂木が2人で納得し合ってるのを見て、尾崎は口をとがらせた。
「なになに?なんで2人で理解し合ってんの!俺にも教えてよ。」

茂木が楽しそうに尾崎の肩を抱いた。
「ココでは言えない!」

俺も反対側から尾崎の肩を組んだ。
「般若湯飲みながら、な。」

ゲラゲラ笑いながら歩いてると、また、暎慶さんに怒られた。