おいてけぼりティーンネイジャー

「では、貫主にご挨拶を。こちらへどうぞ。」
案内されたのは、本堂のすぐそばの小部屋。

現貫主は、なるほど、大村さんに似ていた。
兄弟だもんな。
……なぜか大村さんより俗っぽいというか、ギラギラしてるように見えた。

貫主は俺達に簡単に挨拶してあとは任せる、と退出してった。
「執事補の暎慶です。よろしくお願いします。」
案の定、イケメン僧は暎慶!

「どうも。一条です。同じ漢字、珍しいですね。」
俺は暎慶さんに改めてそう挨拶した。
彼は両手を合わせて一礼した。

後で、廊下に出てから小声で言われた。
「崇彬(たかあき)さまにうかがっております。……それ以前から、お会いしたいと思っていましたが。」
……僧らしからぬ不敵な笑顔に、俺は胸を張って無理して笑顔を作った。


修行体験は、けっこうおもしろかった。
本堂での読経は、別にふざけたわけではないが、何となく3人だとパート分けできてしまった。
まるで合唱だ。
スタッフが笑いをこらえて撮影しているのがわかった。

座禅は、意外とよかった。
普段あまりボーッとすることがないので、貴重というかむしろ贅沢な時間に感じた。
……まあ、途中からどうしてもメロディーや歌詞を考えてしまったけど。
何度か警策で叩かれたけど、意外と痛くなかった。
むしろ気合いが入った。

しかし、昼食はかなり苦痛だった。
しーんとした、寒い部屋で、会話もなくいただくのは、麦飯、味噌汁、タクアン。
……この味噌汁も、だしが薄いというか……。
よく言われるけど、タクアンを音をたてずに喰うとか、無理だし。
はなっから諦めてる俺や茂木とは対照的に、尾崎は真剣そのものでタクアンと格闘していた。

「いかがですか?」
暎慶(えいけい)さんがおかわりを勧めてくれたが、俺は断った。
このお椀がけっこう大きくて量は充分だし、何と言っても、喉に麦がつかえるのだ。

「山芋とかないんですか?麦とろにしたらいくらでもいけそうなんですけど。」
俺がそう言うと、暎慶さんは無表情のまま言った。
「下山されてからどうぞ。」

……取り付く島もない。


昼からは、観光客の後ろでありがたい法話を拝聴した。
目立たないように、ついたての後ろで聞いていたが、終了後にそーっと抜け出す……それだけのことが、俺達にはできなかた。

慣れない草履でつまづいた尾崎を、慌てて暎慶さんが支えてくれたのだが、前を見てなかった茂木が尾崎の腰にぶつかった。
「わっ!」
「いてーっ!」
2人の声に、堂内のヒトが一斉にこっちを見る。
たまたま最後尾が俺だったので、黒衣に金の長髪がかなり目立ったらしい。
悲鳴とざわつきから逃れるように、俺達は走って塔頭(たっちゅう)へと逃げ込んだ。

「……漫画みたいなヒト達ですね。」
暎慶さんが苦笑していた。